盲点とも言える経路で感染するO157から身を守るチェックポイント

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O157とトング

今年8月に起きた痛ましい事件――。
埼玉県と群馬県にある『でりしゃす』というチェーン店で購入した惣菜を食べて、22人もの人が病原性大腸菌O157に感染しました。さらに9月、8月11日にお惣菜を食べた3歳の女の子が、O157に感染して死亡しています。

この事件みなさんもご存知のように、問題が発覚した当初というのは、感染した人たちが共通して購入していたポテトサラダが原因と見られていました。

ですが、死亡した3歳の女の子は、問題のポテトサラダを食べていなかったこと、さらに、市の立ち入り調査の結果、ポテトサラダの製造工場からは菌が検出されなかったことが分かり、感染源が分からないまま不安が高まる一方となったのですが――。

その後、客が食品を取り分ける《トング》が、新たに感染源として浮上してきました。

この事件によって、これまでの日本では考えられなかったことですが、私たちが生きていくうえで基本中の基本である『食の安全』に疑問符がついてしまったと言えるでしょう。

そこでこの記事では、思いもよらない経路から感染するかもしれない『細菌から身を守る』ことに重点を置き、自分や家族の身を守るために何に気を付けるべきなのかといったことを話していこうと思います。

 

出した料理を閉店まで取り替えないという状況

今回、死者まで出た惣菜売り場では、かなりずさんな衛生管理状態だったと言われています。

基本的に料理の交換はせず、朝の11時頃に出した料理を、夜の8時頃まで蓋のない状態で出しっぱなしだということです。さらに、料理を出して1時間ほどすると、表面が乾いてしまい見た目が悪くなるということから、従業員がトングを使って混ぜ返していたようです。

簡単に食べ物を廃棄する今の御時世に大きな問題があるとはいえ、この管理体制はあまりにもずさんだと言えるでしょう。

不特定多数の人が食べ物を扱えるというリスク

惣菜売り場の料理というのは、誰もが気軽に出ている料理を扱える利便性があります。

素手で触る客

しかし裏を返せば『自由に立ち寄れる雰囲気が仇になる』とも言えるわけです。利用客に中には、揚げ物をトングを使わず素手で触ったり、汚れて埃にまみれた作業着のままで、食べ物を扱っている人も少なくありません。

当然のことながら、汚れた手のままでトングに触る客もいるわけなので、菌が繁殖しやすい状況だったことは確かだと言えるでしょう。

ずさんな衛生管理の原因はスタッフ人数の不足だった!?

惣菜売り場というのは、不特定多数の人が食べ物を扱うことにおいては、どこの売り場でも同じです。だからこそ、どこのお店でも衛生管理には十分すぎるほどの注意を払っています。

しかし、今回の《でりしゃす》の店舗では、食べ物を取り上げるトングの扱いに関しても、かなりずさんな管理だったと言えます。

  • サラダの上にトングがなく、別のトングと併用されていた
  • 汁物にトングが完全に浸かっていた
  • トングを入れ替えることなく同じものを使っていた
  • 食品を管理する冷蔵庫の中や調理場の衛生管理もずさんだった
  • レジ担当のスタッフがおらず、調理場のスタッフがレジを打っていた

ざっと挙げただけでも、このような状態で営業されていたようですが、根本的な原因を見ていくと、間違いなく人手不足だったと言えます。

『経費を抑えるために出来る限り少ない人数で営業したい』という気持ちは理解できますが、多くのO157感染者を出し、さらに『3歳の女の子が亡くなった』という現実を見ると、あまりにも人件費を抑えすぎた《人災》と言っても過言ではないでしょう。

 

これまでのO157に対する常識は通用しなくなった

大腸菌の一種であるO157という菌は、主に牛などの家畜の大腸に生息しており、生肉を食べないことが一番の予防だと言われてきました。

言い換えれば、O157という菌は熱に弱いため、食材にしっかりと火を通すことで、感染のリスクが大幅に下がると考えられてきました。しかし、今回の事件の原因と見られているトングが感染経路だとすると、今までの常識は全く通用しないことになります。

つまり、火を通した食材でさえ、O157に感染するリスクは高いままということなんです。

法令やガイドラインの規約がないトングの扱い

スーパーの惣菜コーナーやファミリーレストランのサラダバーなど、私たちがよく利用するお店というのは、日常的にトングが利用されています。

これまで、不特定多数の人が好きな食品を取り分ける形態が食中毒に繋がったケースというのは、ほぼ無いと言ってもよく、お店側もトングの扱いについて、それほど厳しいルールを設けることはしていませんでした。

トング交換

ただ、衛生管理の意識が高いお店では、トングを1時間ごとなど定期的に交換したり、使用前と使用後でトングを使い分けるといった管理を徹底しています。

トングを始めとする売り場で扱う器具の衛生基準というのは、あくまでも自主性に任されています。法令やガイドラインなどといった、公的なルールが設けられているわけではないので、お店側の判断によって、管理体制は大きく変わってきます。

製造工程や殺菌工程を重要視している現状

現在の法令やガイドラインでは、感染源を食品事業所に入れないことを重要視しているので、トングなどの売り場で扱う器具には目が向いていません。

役所は事が起きてからでないと動けない体質なので、対応が後手に回ることは仕方ないと言えるでしょう。

国や自治体の対応が後手に回っている以上、私たちはO157などの感染リスクを避けるため、自分で自分の身を守るしかありません。もちろん小さなお子様や高齢者に対しては、家族や周りにいる大人が守ってあげる必要があります。

 

感染リスクを小さくするために出来ることとは

これまでの常識が通用しない以上、もう役所任せやお店任せといった《おんぶに抱っこ》では、食中毒の危険を回避することはできません。

つまり、私たち自身が《危険な店を避ける目を養う》必要があります。

自分自身はもちろんのこと、大切な家族をO157といった危険な菌の感染から守るために、ここでは、誰にでもできる『安心な店と危険な店の見分け方』について話していくので、日々の買い物や外食に役立てて頂きたいと思います。

『5S』をチェックすることで店を見極めよう

スーパーやファミリーレストランなどを利用する際に、5Sをチェックすることで、そのお店の状態を見極めることができます。

5Sの他に2Sというものがあります。しかしこの2Sというのは、通常では外から見極めることができません。しかし5Sをしっかりチェックすることで、外側である客の目からも2Sの徹底具合を知ることが可能となります。

◆ 『2S』と『5S』それぞれの管理項目
  • 2S:洗浄・殺菌
  • 5S:整理・整頓・洗浄・清潔・しつけ

すべて頭文字の『S』をとって、衛生管理や品質管理の意識を高める企業努力の項目となっています。

しっかり5Sが実践されているかを見極めるポイント

  • 作業着が綺麗でパリっとしているか
  • 調理場がきちんと整理されているか(調理場が見えない場合は店内を見る)
  • 調理担当の人が腕時計や指輪をしているか

このような点をチェックすることで、そのお店の5Sの徹底ぶりをある程度見極めることが可能となります。

5Sをチェックするポイントを押さえておけば、客側の目線からは見極めにくい2Sの徹底具合を予想することができるので、少なくとも危険があるお店を利用してしまうリスクは避けられるはずです。

厳しい自主基準を徹底している帝国ホテル

日本を代表するホテルでもある帝国ホテルでは、非常に厳しい5Sの自主基準を設けています。

インペリアルバイキング

帝国ホテルで提供されている《インペリアルバイキングサークル》では、複数のお客がご自身でサーブするエリアもあるため、トングの取り替えは15分おきを目安に行っています。スーパーやファミリーレストランに、ここまでの自主基準を強制することは酷と言えますが、帝国ホテルの徹底ぶりは見習うべき体制だと言えるでしょう。

さらに帝国ホテルでは、料理ごとにトングの形を変えているので、他の料理に使いまわされることもありません。

利用するお客の側にしても、本当に安心して食べることができるので、食べ物を扱うお店にとっては最高のお手本と言える存在でしょう。

 

トングの材質によっては菌繁殖のリスクが高まる!?

トングにも色々な種類があり、その材質も様々なものがあります。その材質によっては、危険な菌の繁殖に繋がるリスクが高まってしまいます。

トングの材質

たとえば、素材がステンレス単体のものであれば、比較的に衛生的だと言えるのですが、プラスチックと複合したトングの場合は衛生的とは言えません。上の画像のようなトングでは、プラスチックがついている隙間は、殺菌できず菌が繁殖するケースが多々あります。

さらにプラスチックではヒビが入りやすく、その隙間も殺菌しにくい箇所となるので非衛生的だと言えます。

竹や木といった自然素材で出来たトングにしても、プラスチック製と同様にヒビが入りやすい素材なので、ステンレス製と比べると衛生的には低くなってしまいます。

トングで扱う食材によってもリスクが変わる

惣菜を扱っているコーナーでは、サラダや揚げ物、煮物などといった、あらゆる料理が並んでいます。

前述しているように、トングそのものの素材で感染の危険度は変わるのですが、トングで扱う食材によっても感染リスクは大きく変わってきます。つまり、トングを介してどれだけ菌が付着するかは、食材や料理の種類で差があるということです。

たとえば、パンのように乾いた食品であれば、菌が繁殖するという危険性は低いと言えます。

しかし、惣菜というのはパンとは違って水分が多いものが多く、菌が繁殖しやすい状態にあります。さらに、トングに触れる面積も多いため、菌が付着しやすいことから感染してしまうリスクが高まってしまいます。

なので惣菜を選ぶときには、トングが汁などに長時間浸かっているものは避けるのが無難だと言えるでしょう。

 

まとめ(O157から身を守るためのチェックポイント)

日本という国は、世界基準で見ると《潔癖症》とも言えるほど、清潔ということに気を使う数少ない国です。

なので今回の事件は、ある意味《イレギュラーな事故》とも言える事態で、スーパーやファミリーレストランで提供されている惣菜やサラダなどは、衛生管理は徹底されていると思って良いはずです。

ただ、今回は3歳の女の子が亡くなってしまうという、あってはならないことが起きています。

そういった事実を受けて、レストランや惣菜店が使い回しを避けるために、トングの大量購入に踏み切っています。このへんは対応が早く、消費者側としては安心できる材料とも言えるでしょう。ただ、トングの品薄状態が起きているようで、少々気になる部分でもあります。

しかしこの状態を裏返せば、今までトングは衛生管理上で盲点だったと分かったことになります。つまり、私たちが気づいていない盲点はまだあるかもしれないんです。

安心して食事を楽しむことができるように、国・自治体・企業はもとより、我々個人レベルでも万全の注意を払う必要があると言えます。

 


 



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